｜士林夜市編｜序章

夕暮れ時、いくつかの灯りが人々の影を映し出し、士林夜市はまるで台北の夜を照らす灯台のようです。夕方から深夜まで、路地のネオンライトはまだきらきらと光り、忙しい屋台と絶え間ない客たちもまだ足を止めることはありません——その賑やかな様子は台湾の夜市文化の代表であり、この記事で皆さんに士林夜市の魅力を紹介します。

｜夜市の起源｜

慈諴宮は新士林大南路近くに位置しており、士林夜市は宮廟の発展によって徐々に形成されました。夜市の発展は宮廟が建設された後にその範囲を拡大し始めたものです。当時、夜市は存在せず、農産物の取引の中心とネットワークが形成され、商人たちはこの地域で屋台を出す機会が提供されました。時間の経過とともに、これらの屋台は次第に発展し、市場を拡大していき、夜市は徐々に夜市らしい形を形成していきました。

最初にここで屋台を出していたのは、主に市場で働く商人の飲食ニーズを満たすためでした。なぜなら、商人は通常、早朝から忙しく仕事に取り組み、昼食時まで一日中忙しいため、お腹が空いてエネルギー補給が必要だったからです。そのため、市場の近くには食品を販売するいくつかの小さな店が現れ、市場の商人の飲食ニーズを満たすために提供されましたが、当時はまだ夜市の形ではありませんでした。

おそらく民国50年代から60年代初頭にかけて、銘傳大学に多くの女学生がいたため、多くの男性が彼女たちをデートに誘うようになり、この地域で夜間に営業を始める店が一店舗、二店舗と少しずつ現れました。これが夜市が形成される第一歩となりました。

夜市の形成により、さらに多くの人々がデートやショッピングのためにここに訪れたため、営業のチャンスをつかむため、多くの店を開店しました。これが今のような夜市が形成されるきっかけとなったのです。なので、夜市の屋台で働く商人のほとんどは地元の人ではなく、生計を立てるためにここに営業をしに来た県外からの人々です。

（慈諴宮主任　江運永さん）

｜夜市の変遷｜

邱邱田町長に「士林で最も変わった場所はどこだと思いますか？」と尋ねた際、町長はこの質問を長い間待っていたかのように、ためらいなく「夜市。それが変わったから、全区域が変わった。」と答えました。町長は以前の士林夜市が古風な雰囲気に包まれていたこと、屋台やお店がテントを張っていたこと、現在のように遮蔽物がなかったことを思い出します。雨天時には、みんなが雨靴を履いて商売や買い物をしていました。町長はまた、夜市の中心地、すなわち現在の入り口付近に天然の泉があり、そこにはたくさんの大きなハマグリがいたこと、そして子供の頃にそこでハマグリを捕まえていたことを思い出します。

（台北市士林区福志里　邱邱田町長）

｜士林夜市は心の中にある｜

士林で育った李心瑜さんにとって、士林夜市は家族のような親しみを感じる存在です。彼女は学生時代、余暇には士林夜市の近くを散策します。士林の若者代表として、士林に対する知識のレベルはトップクラスであると言えるでしょう。

士林夜市の「家湘冷麺」、「王子起司馬鈴薯（チーズポテト）」、「豪大大雞排（ジャンボチキンカツ）」は李さんの成長期の大部分を共有しています。しかし、物価の上昇により、チキンカツの価格は以前の55元から現在100元以上に値上がりしました。そして地元のチキンカツ店がオープンしてからは、豪大大雞排に行くことが減りました。また、慈諴宮の入口にあるベジタリアンのお店は彼女が最もお勧めするお店であり、訪れる機会があれば、ぜひ試してほしい味です。

（士林在住　李心瑜さん）

全台湾で多くの高校キャンパス、文教地区を誇る士林地区は、かつて栄えた文人の風潮文化が「士子如林（士子が如く森のようだ）」という美しい称号が生まれました。百年の歴史を持つ士林小学校、士林中学校、陽明高校、士林商業高校、泰北高校、東吳大学、銘傳大学、及び文化大学はすべてこの地区に位置しており、多くの学生たちにとって、「福音」と言えば「士林夜市」です

士林で学んでいた小黒先生は、士林夜市について語ると、食べもの、飲むもの、着るもの、使うもの、遊ぶもの、思いつく全てのものがここで手に入ると言います。そのため、学生に非常に人気があります。

そして、2011年に閉店した「都會叢林（「都会のジャングル」という名のショッピングモール）」は、授業後に友人との交流を深める最適な場所でした。小黒先生は、北投に住んでいるにも関わらず、士林での学びの時期だけでなく、幼少期から両親が家族全員で士林夜市を訪れることがよくあったと振り返ります。夜市は地元の人々や近隣住民にとっても、家族での外食やカップルのデート先、友人との集まりに最適な場所です。

（北投区　小黒先生）

許聚茂薬局が士林夜市内にあり、夜市は許店主と共に成長したと言える存在でしょう。店主によれば、かつて士林には三脚渡という渡船口があり、交通の中心地となっており、水路、鉄道、道路、全てが士林駅に集まっていました。陽明山、北投、淡水など、市内に入る前は皆必ず士林を通るため、夜市にはさまざまな生活必需品が揃っており、皆士林で食事を済ませてから家に帰ります。今では、時代の変化に伴い、夜市は商業化が進んでおり、早市と夜市があり、さらに深夜の市場が存在します。士林夜市には多くのグルメがあり、店主はたくさん食べてきましたが、それは彼が夕食や夜食の時間に飽きることなく再び夜市に行くことを妨げることはありません。

（許聚茂薬局店主　許鴻銘さん）

士林に長年住んでいる地元の鄭さんは、かつて士林夜市が台湾で広く知られ、盛況だったことについて話しました。その繫盛時には、夜市を歩くと後ろから人々が押してくるほどで、子供と一緒に行く時は手をしっかりと手をつないで歩かなければならず、店舗は常に満席状態で席がなかなか見つからなかったと言います。

残念なことに、士林夜市が一部地下化されてからはかつてほどの盛況は見られず、多くの店が飲食店であり、地下空間は蒸し暑く、換気が不十分で客足が減少していきました。士林夜市の店舗のオーナーたちは、地下化により多くの客が流れていったことを痛感しました。

鄭さんによれば、政府は初めに地上にある店のテントの見栄えが悪いと考え、百貨店のフードコートのように改築してより多くの人々を引き付けることを目指したが、結果は期待通りにはいかなかったため、夜市のテントを撤去する決定がなされました。この政策の失敗と新型コロナウイルスの影響が重なり、士林夜市の衰退が加速しました。

（士林在住　鄭さん）