｜士林劇場編｜序文

各都市はそれぞれの自分たちの物語があり、市内に立ち並ぶ建築物は過去の痕跡を担っています。士林に「士林劇場」、「陽明劇場」、「立峯劇場」、「民族劇場」、「光華劇場」という五つの劇場があり、当時の住民にとって重要な娯楽と社交の場であり、何世代にも渡り人々の変遷を見てきました。残念ながら、1955年に開業した台北最古の陽明劇場は2019年9月15日に閉館しました――しかし、ここで過ごした無数の命がどのような物語を残しているのでしょうか？この記事では、現代人があまり知らない歴史を拾い上げ、前の世代がここで経験した美しい過去を振り返ります。

｜士林の五つの古い劇場とその思い出｜

士林の五大劇場の中でも、王德利地町長は陽明劇場に足繁く通っていました。。当初は連続して上映されていたため、同じ映画を何度も見ることができました。劇場の外で売られていた庶民料理を食べながら、長い夏の時間をエアコンと過ごし、当時の節約方法のひとつでした。また、町長は香港映画が流行していた時代、周星馳、周潤發、楊紫瓊などの有名な香港スターと、ユーモラスでぶっ飛んだ香港映画やカンフー映画が、彼の成長過程で欠かせない思い出でした。これはミレニアム世代には想像できないほどの香港映画ブームでした。

（台北市士林区福中里　王德利町長）

許立丕町長は、若いころ、生活環境に対する要求が現代人ほど多くなかったと話しました。豪華な内装や設備を積極的に追求するのではなく、当時の生活は素朴で、ただ道路にスクリーンを設置して映画を放映するだけでも、皆が一堂に会して映画を楽しんでいました。それはシンプルで幸せな時間でした。

士林夜市の観光が盛んになるにつれ、最初は一つの劇場だけが早くも満員になり、多くのオーナーが近隣で劇場を開業しました。当時の士林には多くの劇場があり、ほとんどが慈諴宮の口に集まっていました。

（台北市士林区義信里　許立丕町長）

士林夜市で育った許聚茂漢方、店主の許鴻銘さんも当初の士林劇場について話しました。店主は、子供の頃、毎年旧正月の初日には家で昼食を食べた後、同級生と一緒に劇場で映画を観ることが恒例となっていたと言います。これは毎年の恒例行事であり、子供たちにとって、当時の士林には他に娯楽がなく、遠くへ行くこともできなかったので、新年の唯一の娯楽は映画を観ることでした。

（許聚茂薬局店主　許鴻銘さん）

幼少期から士林で育った大学生の李心瑜は、士林の劇場「陽明劇場」について語っています。劇場は彼女が子供のころに訪れた場所で、劇場の外観がやや古びている印象がありますが、劇場が彼女を引き付けるのは、内装がどのようなものであるかではなく、劇場前の屋台が多種多様で、グルメのために多くの人が立ち止まるからです。その当時は有名な豪大大雞排（ジャンボチキンカツ）や一時的に流行った飲料店歇腳亭（Share Tea）がありました。学生たちが陽明劇場によく訪れる理由の一つは、中正路に多くの学校があること以外に、小中学生たちにとって多くないお小遣いの中で陽明劇場のチケットは安く、親しみやすいため、映画を楽しむことができます。しかし、時間が経つにつれて劇場の選択肢が増え、学生身分から社会人になった多くは、台北駅にある威秀映画館で映画を見ることを選びます。

（士林在住　李心瑜さん）

士林在住の鄭さんも、昔は映画を見るときには光華劇場や陽明劇場を選ぶことが多かったです。これらの劇場は規模が大きく、新しい映画が上映されていました。他の劇場は、例えば立峰劇場は規模が小さく、古い映画が多く上映されていました。しかし、時が経つにつれて光華劇場は産後ケアセンターに改装され、立峰劇場は取り壊され、陽明劇場も同様の運命をたどりました。かつての士林の劇場は次々と姿を消し、残念な気持ちでいっぱいです。

（士林在住　鄭さん）

洪明鎮町長は、学生時代のレジャーとエンターテイメントについて話しました。ほとんどの思い出が士林の5つの古い劇場の周りに集まっています。記憶に残っているのは、古いスタイルの劇場が学校の体育館のようで、現代的な個室デザインではありませんでしたが、若い時代の喜びの源でした。当時の劇場は、若い男性たちがデートの場所としての最良の選択肢でした。面白いことに、町長は子供の頃、映画の終わりに近づいたとき友達と入場し、映画のエンドロールを見ていました。士林の劇場について、町長の言葉には懐かしさと人情味が感じられます。

劇場の外では、さまざまなお手軽なグルメを売っている小さな屋台がよく見られました。今流行のポップコーンから香ばしい焼きウミニナまで、多くの人が映画を見る際に必ず手に入れる物でした。劇場ではさまざまな種類の映画が上映されており、フォックス映画製作の洋画や懐かしい香港映画などがありました。当時町長は、彼らが最も劇場で見たいのはアクション映画であり、鄭佩佩などの女優は当時多くの人々の憧れの恋人的存在でした。

時代の変化とともに、さまざまなエンターテイメントが台頭し、劇場での観客数が大幅に減少し、劇場は牛肉市場へと変貌し、沈黙へと向かっていきました。

（台北市士林区仁勇里　洪銘鎮町長）

｜映画館で上映される映画の種類｜

許立丕町長は、当時の陽明劇場でよく上映されていたのは劇場映画であり、立峰劇場は再上映の映画が多かったと言います。一方で、民族劇場は慈誠宮の隣の小道にあり、彼と友人がよく訪れる場所でした。士林小学校の方向に、現在は高層ビルになった建物はかつて士林劇場の所在地でした。これらの劇場は地元の人々が楽しむエンターテイメント施設であり、人々の感情や思い出をつないでいました。

（台北市士林区仁勇里　許立丕町長）

陳明松町長は以前ビデオテープがなかったため、中学時代に劇場で時間を過ごすのが非常に流行っていたと言っています。その頃は一枚のチケットで二本の映画を見ることができました。また、各劇場で上映される作品も異なっていました。光華劇場はほとんどカンフー映画（武術）を上映していたが、士林劇場は洋画が多かった。立峯劇場では、香港映画やドラマ、民族映画からさまざまなジャンルの作品まで、上映する映画の種類にはあまり制限がありませんでした。

（台北市士林区旧佳里　陳明松町長）

時代の変遷に伴い、多くの劇場は存在しなくなりましたが、これらの断片的な記憶は依然として地域住民の心の中に残っています。劇場は彼らの多くの思い出をつなぎ止め、彼らの成長を見守り、士林との感情的な絆を築き上げてきました。